短編

仏と呼ばれたウーパールーパー

薄暗い部屋の片隅に、水槽が1つ置かれている。中では、黒いウーパールーパーが気持ちよさそうに泳いでいる。 水槽の前に座り込み、それを眺めている男が1人。どれだけそうしているのだろうか。男の頭の上にはホコリが溜まっている。心なしか、ウーパールーパ…

春の日、空から油が降り注ぐ 油に塗れたこの世界では、あなたのことも抱きしめられない 路上の油溜まりを手で掬い、哀しげな目でそれを見つめている はしゃぐ小学生の声 目をやると、助走をして地面に身を投げ、気持ちよさそうに滑っている それを止めること…

初めは鼓膜を微かに震わせるその音を、私は気にも留めていなかった。 それよりも、試合に向けた精神統一に集中する。 しかし、気にも留めない、と思えば思うほど、壊れたラジオのように一定のリズムで繰り返すその音は、意識の奥深くへと介入してくるのであ…

ヨウムウ

良き好敵手であり、また親友でもあったフレンチがヨウムウにやられてしまった。 しかし、フレンチもただでやられたわけではないようだ。ヨウムウのものと思われる果汁が点々と奥まで続いている。この好機をやすやすと見逃すほど愚かではない。私と私とフレン…